ジャズ名盤決定版|初心者から通まで必聴アルバム 50選

「ジャズは難しそう」「何から聴けばいいのかわからない」
そんな不安を抱く方は少なくありません。しかし、一度その扉を開けば、そこには自由と情熱、そして緻密な計算が共存する、無限の音楽世界が広がっています。

サブスクリプションで手軽に音楽を聴ける時代だからこそ、
“一生モノの名盤”を知識とともに深く味わう価値” はむしろ高まっています。

本記事では、中古レコード買取・販売の現場で数万枚のジャズ盤に触れてきた当店スタッフの視点を交え、時代を超えて愛される「ジャズ名盤」の魅力を徹底解説します。単なるカタログ紹介ではなく、
そのアルバムがなぜ生まれ、なぜ人々の心を捉え続けるのか
その核心に迫ります。

『ジャズ名盤』とは何かを最初に整理する

「名盤」という言葉は広く使われますが、ジャズにおける名盤には、単なる人気作以上の意味があります。
ジャズは譜面を超えた“瞬間の芸術”。その一瞬が永遠に封じ込められた記録こそが、名盤と呼ばれるのです。

名盤と呼ばれる3つの明確な基準

ジャズにおいて、ある作品が「名盤」として歴史に刻まれるには、主に3つの基準が存在します。

  1. 音楽史を変えた「革新性」
    ジャズは常に進化の歴史です。既存のルールを破り、新しい演奏手法や理論を提示した作品は、時代を超えて名盤として語り継がれます。
    例:マイルス・デイヴィスが提示した“モード・ジャズ”
    → コード進行に縛られていたジャズを解放し、即興の可能性を劇的に拡張した。
    こうした革新は、後のロックやヒップホップにまで影響を与えています。

  2. 奇跡的な「一期一会」のセッション
    ジャズの醍醐味は即興(インプロヴィゼーション)
    その場に集まったミュージシャンが互いに反応し合い、二度と再現できない化学反応が起きた瞬間――
    その熱量が録音に刻まれたとき、名盤が誕生します。
    メンバーの体調、スタジオの空気、観客の熱気。
    すべてが噛み合った“奇跡の記録”こそが名盤の正体です。

  3. 録音芸術としての「完成度」
    ジャズは“音の質感”を楽しむ音楽でもあります。
    1950〜60年代、ルディ・ヴァン・ゲルダーら名エンジニアが作り上げた音像は、現代のハイレゾにも匹敵する実在感を持っています。
    ・管楽器の息遣い
    ・ウッドベースの唸り
    ・シンバルの繊細な余韻
    これらが最高の状態で記録されていることは、名盤の重要な条件です。

  4. ライブ録音こそが「定番」となる独自の文化
    一般的な洋楽や邦楽では、スタジオ録音盤が「正史」であり、ライブ盤はファン向けの企画モノとして扱われることが多いですが、ジャズにおいてはライブ盤がそのまま歴史的な最高傑作として語り継がれることが多々あります。
    「なぜジャズではライブ盤がこれほどまでに人気なのか」
    それはジャズが「対話」と「一期一会」の音楽だからです。スタジオという閉鎖空間よりも、観客の反応や会場の熱気に包まれた現場の方が、プレイヤーの限界を超えた閃きや、二度と再現できないスリリングな即興が生まれやすいのです。拍手やグラスの音、時として演奏者の荒い息遣いすらもが音楽の一部となり、その場の熱狂がそのままパッケージされたライブ盤は、スタジオ盤以上にアーティストの本質を鮮烈に突きつけることがあります。

ジャズ名盤が時代を超えて評価される理由

ジャズ名盤が60年以上経っても色褪せないのは、人間の根源的な感情”が剥き出しで表現されているから です。

ジャズはアフリカ系アメリカ人の苦難の歴史から生まれた音楽。
自由への渇望、孤独、歓喜――
それらが音に凝縮されています。

また、ジャズは流行に左右されにくい音楽です。
楽器本来の響きとプレイヤーの内面を掘り下げるため、1950年代の録音でも“古い”ではなく“深い”と感じられます。

ジャズ名盤 50選

ジャズの世界への入り口は、「心地よさ」と「ジャズらしさ」を両立した作品から入るのが理想です。ここでは、世界中で「最初の一枚」として選ばれ続けている絶対的な10枚を、その歴史的背景とともに深掘りします。

初めてでも聴きやすい名盤の10枚

1. Miles Davis / Kind of Blue

1959年に録音された、モダンジャズ史上最大のベストセラーです。マイルス・デイヴィスが提唱した「モード・ジャズ」の完成形として知られます。それまでのジャズは、目まぐるしく変わるコード(和音)の上でテクニックを競うものでしたが、本作ではあえてコード進行を単純化し、一つの音階(モード)の上でゆったりと自由なメロディを紡ぐ手法をとりました。
【聴きどころ】:冒頭の「So What」での、ポール・チェンバースのベースとビル・エヴァンスのピアノが作り出す静謐な導入部。そしてマイルスの「一音の重み」を感じさせるトランペットソロ。激しいドラムや速弾きはなく、まるで夜の静寂を音にしたような美しさが特徴です。

2. Art Blakey & Jazz Messengers / Moanin’

「ジャズといえば、この曲」といわれるほど有名なタイトル曲を収録した、1958年の作品。アート・ブレイキー率いるジャズ・メッセンジャーズは、ジャズの楽しさを大衆に広める「伝道師」のような役割を果たしました。本作は「ファンキー・ジャズ」という言葉を確立させ、教会音楽(ゴスペル)やブルースの泥臭くも温かい要素をジャズに注入しました。
【聴きどころ】:ベニー・ゴルソン作曲の楽曲群がとにかくキャッチーです。「モーニン」のコール・アンド・レスポンス(問いかけと答え)のようなピアノと管楽器のやり取りは、理屈抜きに身体が揺れます。ブレイキーの代名詞である「ナイアガラ・ロール」と呼ばれる豪快なドラムも、このアルバムの熱量を引き上げています。

3. Bill Evans / Waltz for Debby

ピアノ・トリオの概念を根底から変えた1961年のライブ録音。それまでのピアノ・トリオは「ピアノが主役、ベースとドラムは伴奏」という役割がはっきりしていましたが、ビル・エヴァンスは3者が対等に会話をする「インタープレイ」を重視しました。
【聴きどころ】:エヴァンスが姪のために書いたタイトル曲の、あまりに美しく、どこか儚い旋律。特筆すべきはスコット・ラファロのベースです。ピアノの伴奏に留まらず、まるで歌うかのようにメロディに絡んでくるベースラインは、現代のジャズにおいても一つの到達点とされています。

4. Sonny Rollins / Saxophone Colossus

「サキソフォン・コロッサス(サックスの巨人)」という名の通り、ソニー・ロリンズの豪快で大らかなテナーサックスが炸裂する1956年の名盤です。ロリンズは、一つの短いメロディを執拗に、かつユーモアたっぷりに展開していく「主題展開」の天才です。
【聴きどころ】:1曲目の「St. Thomas」。ロリンズの故郷であるカリブ海のリズムを取り入れた、非常に明るくリズミカルな楽曲です。初心者がジャズのアドリブを聴く際、途中で何を吹いているか分からなくなることがありますが、この曲のロリンズは、常に元のメロディの影を感じさせながら、驚くほどロジカルで楽しいソロを展開します。

5. John Coltrane / My Favorite Things

1960年録音。コルトレーンがソプラノサックスを本格的に導入し、大衆的な人気を不動のものにした記念碑的作品です。映画『サウンド・オブ・ミュージック』の劇中歌を、ジャズの枠組みを超えた「モード・ジャズ」の傑作へと鮮やかに塗り替えました。
【聴きどころ】:13分以上に及ぶタイトル曲。同じコードを執拗に繰り返す中で、コルトレーンのサックスが呪術的とも言える高揚感を生み出していきます。マッコイ・タイナーのピアノが生み出す東洋的な響きも相まって、ジャズ史上最もドラマチックな演奏の一つです。

6. Dave Brubeck / Time Out

「5拍子」というジャズでは異例の変拍子を取り入れた「テイク・ファイブ」を収録。1959年の発表当時は実験的すぎると言われましたが、蓋を開けてみればジャズ史上屈指の人気曲となりました。
【聴きどころ】:ポール・デスモンドの「アルトサックスの音色」です。彼は自分の音を「ドライ・マティーニのようだ」と表現しましたが、その通り、全く濁りのない、透き通った甘美な音が5拍子の奇妙なリズムに完璧にフィットしています。

7. Cannonball Adderley / Somethin’ Else

キャノンボール・アダレイの作品ですが、実際にはサイドマンとして参加したマイルス・デイヴィスがプロデュースしたと言われる一枚。シャンソンでも有名な「枯葉(Autumn Leaves)」のジャズ・アレンジにおける最高傑作がここにあります。
【聴きどころ】:冒頭、マイルスのミュート・トランペットが奏でる、あえて音を詰め込まない「間」の演出。それに続くキャノンボールの、艶やかで生命力に溢れたアルトサックス。静と動の対比が見事なまでに構築されています。

8. Herbie Hancock / Maiden Voyage

1965年、弱冠25歳のハービー・ハンコックが作り上げた「海」をテーマにしたコンセプト・アルバム。それまでのジャズの泥臭さを排し、洗練された都会的な浮遊感を実現しました。
【聴きどころ】:タイトル曲「処女航海」の、サスペンスフルでありながらどこか優雅なコードの響き。フレディ・ハバードのトランペットが、大海原を渡る風のように吹き抜けます。後の「フュージョン」や現代のジャズにも繋がる、非常にモダンな感覚が楽しめる一枚です。

9. Oscar Peterson / We Get Requests

「プリーズ・リクエスト」の邦題で親しまれる、ピアノ・トリオのベストセラー。オスカー・ピーターソンのピアノは「超絶技巧」で知られますが、本作ではそれを聴きやすく、かつ歌心たっぷりに披露しています。
【聴きどころ】:「イパネマの娘」などのポピュラーな楽曲が、ピーターソンの手によって鮮やかにジャズへと昇華されています。録音状態も極めて良く、各楽器の分離が良い。ピアノの鍵盤を叩くタッチの強弱まで手に取るようにわかるため、オーディオファンからも長く愛されています。

10. Chet Baker / Chet Baker Sings

トランぺッターのチェット・ベイカーが「歌」を披露した、ジャズ・ボーカルの入門としても名高い1954年の作品。チェットの歌声は、決して声量があるわけでも、完璧なテクニックがあるわけでもありませんが、それゆえに独特の「寂寥感」と「優しさ」を湛えています。
【聴きどころ】:「My Funny Valentine」。囁くような、中性的な歌声は、一度聴くと耳から離れません。また、歌の合間に吹かれるトランペットソロも、歌と同じくらい叙情的なメロディを奏でます。


ジャズ入門で失敗しにくい名盤の共通点

初心者が「ジャズは難しい」と感じてしまう原因の多くは、メロディが不明瞭なフリージャズや、あまりに前衛的な作品を選んでしまうことにあります。入門に向く名盤には「メロディ(テーマ)がはっきりしている」「リズムが一定で心地よい」「録音状態が良い」という3つの共通点があります。これらを押さえることで、挫折することなくジャズの深みへと進むことができます。


ビバップからハードバップへ

1950年代半ば、技巧を極めすぎた「ビバップ」への反動として、より大衆的で、黒人教会のゴスペルやブルースのフィーリングを取り入れた「ハードバップ」が誕生しました。この時代は、ジャズが最も「黒人教会の熱気と都会の洗練が融合した」黄金期です。

11. Charlie Parker / Jazz At Massey Hall

1953年録音。ビバップの開祖チャーリー・パーカーをはじめ、ディジー・ガレスピー、バド・パウエル、チャールズ・ミンガス、マックス・ローチという、ジャズ界の「五大巨頭」が集結した伝説のライブ録音です。
【聴きどころ】:音質は当時の技術的な限界や録音環境により、現代の作品と比べると決して「クリア」とは言えませんが、そこに刻まれている熱量は異常なほどです。特に「A Night in Tunisia(チュニジアの夜)」でのパーカーのソロは神がかっています。音の良し悪しを超え、「ジャズの黄金期が放った最後にして最大の輝き」を感じ取ることができる、音楽史上の遺産とも言うべき一枚です。

12. Art Pepper / Meets the Rhythm Section

1957年録音。ウエストコーストの白人アルト奏者アート・ペッパーが、当時絶頂期だったマイルス・デイヴィスのリズム隊(レッド・ガーランドら)と共演した、「奇跡の1日」の記録です。
【聴きどころ】:劣悪なコンディションから生まれたとは思えない、火の出るような熱演。特に「You’d Be So Nice to Come Home To」での、ペッパーの切なくも情熱的なソロは、ジャズ・アドリブの歴史に残る名演です。追い込まれた芸術家が放つ、究極の輝きがここにあります。

13. Sonny Clark / Cool Struttin’

1958年録音。ブルーノートが生んだ最高傑作の一つであり、特に日本で「モダンジャズの象徴」として愛される一枚です。ソニー・クラークのピアノは、派手な技巧よりも都会的な「粋」と影のあるメロディが魅力。ファッショナブルなジャケットそのままの、洗練されたNYの空気感が漂います。
【聴きどころ】:タイトル曲「Cool Struttin’」の、ブルージーでありながら背筋の伸びた歩みのようなリズム。アート・ファーマーの端正なトランペットと、ジャッキー・マクリーンの少しピッチの外れた、泣き出しそうなアルトサックスが、深夜のニューヨークの裏通りを想起させます。日本人の琴線に触れる「マイナー(短調)の美学」がここに凝縮されています。

14. Lee Morgan / The Sidewinder

1963年録音。天才トランペッター、リー・モーガンが、ジャズに「ロック的な8ビート」を持ち込みました。これが「ジャズ・ロック」「ソウル・ジャズ」の先駆けとなり、ジャズを再びダンスフロアへと引き戻しました。
【聴きどころ】:タイトル曲のイントロで流れる、印象的なベースライン。モーガンのトランペットは、鋭く、華やかで、どこか生意気な若者のエネルギーに満ちています。

15. Hank Mobley / Soul Station

1960年録音。テナーサックス奏者ハンク・モブレーの最高傑作。彼は「ミドル級のチャンピオン」と称されます。コルトレーンのような激しさや、ロリンズのような豪快さはないものの、その音色には独特の「まろやかさ」と「完璧な歌心」があります。
【聴きどころ】:1曲目の「Remember」から最後の曲まで、モブレーの吹くメロディには一切の無駄がなく、流れるように耳に入ってきます。ウィントン・ケリー(ピアノ)、ポール・チェンバース(ベース)、アート・ブレイキー(ドラム)という「黄金のリズム隊」が、モブレーのサックスを極上のベルベットのように包み込む、ハードバップの完成形です。

16. Clifford Brown & Max Roach / Study in Brown

1955年録音。25歳で交通事故により急逝した不世出の天才、クリフォード・ブラウン。彼のトランペットは、どんなに速いパッセージを吹いても音が濁らず、まるで輝く真珠が連なっているかのようです。
【聴きどころ】:「Cherokee」での驚異的なスピードのソロ。しかし、ただ速いだけでなく、その音色には常に温かみがあります。ドラムのマックス・ローチとの完璧なコンビネーションは、後のすべてのハードバップ・バンドの規範となりました。

17. Zoot Sims / Down Home

1960年録音。テナーサックスの「スウィングの塊」ことズート・シムズが、最もリラックスした状態で吹き上げたワンホーン名盤の決定版です。
【聴きどころ】:全編を通して溢れ出すリズム感。ズートのサックスは、難しい理屈を抜きにして「音楽を聴く喜び」を教えてくれます。古いスタジオに集まった仲間たちが、心底楽しんでセッションしている空気感まで封じ込められた、温かみのある一枚です。

18. Horace Silver / Song for My Father

1964年録音。ピアニストのホレス・シルバーは、自身のルーツであるポルトガル系のリズム(ボサノヴァやサンバ)と、泥臭いファンクを融合させました。
【聴きどころ】:タイトル曲のベースライン。後にスティーリー・ダンが「Rikki Don’t Lose That Number」で引用したことでも知られます。エキゾチックでどこか懐かしいメロディは、ジャズが持つ「郷愁」を現代的にアップデートしたものであり、何度聴いても飽きることのない不思議な魔力を持っています。

19. Red Garland / Groovy

1957年録音。レッド・ガーランドのピアノは、左手のブロックコードが生み出す「華やかさ」と、右手のシングルトーンが描く「可憐なメロディ」が特徴です。
【聴きどころ】:「C-Jam Blues」で見せる、軽快なスウィング感。難しいことを考えず、音楽に身を委ねてステップを踏みたくなるような楽しさがあります。仕事終わりの一杯と共に聴くのにこれほどふさわしいジャズはありません。

20. Tommy Flanagan / Overseas

1957年録音。「名脇役」として数多くの名盤を支えたピアニスト、トミー・フラナガンがスウェーデンに遠征した際に残した、ピアノ・トリオの金字塔です。派手さはありませんが、一音一音が丁寧に磨き上げられたクリスタルのような美しさを持っています。
【聴きどころ】:1曲目の「Relaxin’ at Camarillo」から溢れ出す、端正で品格のあるスウィング感。フラナガンのピアノは「ジャズの教養」を感じさせる知性があり、どんな場面でも聴き手の心にスッと馴染みます。特に日本では「名盤中の名盤」として長く愛されており、レコードとしての所有欲も満たしてくれます。

21. Wes Montgomery / The Incredible Jazz Guitar of Wes Montgomery

1960年録音。モダンジャズ・ギターの完成者、ウェス・モンゴメリーの最高傑作です。ピックを使わず親指一本で弾く「親指奏法」と、重厚な響きの「オクターブ奏法」により、ギターという楽器にピアノや管楽器のような豊かな表現力を与えました。
【聴きどころ】:1曲目の「Airegin」。信じられないようなスピードで繰り出される瑞々しいフレーズ。そして「Four on Six」での、緻密でありながら驚くほどキャッチーなリフ。ウェスのギターには「温かみ」と「洗練」が同居しており、ギター好きならずとも、その圧倒的なスウィング感に魅了されること間違いありません。

22. Kenny Burrell / Midnight Blue

1963年録音。ジャズ・ギター名盤の代名詞。ケニー・バレルは、管楽器のようなフレージングと、ブルースの深いフィーリングをギターで表現しました。
【聴きどころ】:深夜の静寂に溶け込むような「Chitlins Con Carne」。コンガを導入した軽妙なリズムの上で、バレルのギターが語りかけるように響きます。まさに「大人のためのジャズ」を象徴する作品です。

23. MJQ (Modern Jazz Quartet) / Django

1953〜55年録音。ジャズにクラシックの室内楽的な格調高さを持ち込んだグループの代表作。ヴィブラフォンのミルト・ジャクソンとピアノのジョン・ルイスが生み出す、ひんやりと澄んだアンサンブルが魅力です。
【聴きどころ】:タイトル曲「Django」。亡くなった名ギタリスト、ジャンゴ・ラインハルトに捧げられたこの曲の葬送行進曲のような静謐な導入から、スウィングへ移る瞬間。ジャズの持つ「気品」と「哀愁」が見事に融合しています。

 

モード以降の新しいジャズの響き

1959年以降、ジャズはコード進行の枠を超え、より自由で開放的な響きを追求する方向へ進みました。
「モード・ジャズ」の影響は、タイナーのような王道だけでなく、静謐なウエストコースト、ソウルフルなギター作品、ミンガスの独自の作曲アプローチなど、60年代の多彩なサウンドにも広がっていきます。
ここでは、そんな“モード以降の新しい感性”を感じられる名盤を紹介します。
※モダン・ジャズと言葉が似ていますが、モダン・ジャズ=“戦後ジャズ全体の総称”、モード・ジャズ=“その中の一つの即興スタイル”を言います

24. McCoy Tyner / The Real McCoy

1967年録音。コルトレーンの黄金カルテットを支えたピアニスト、マッコイ・タイナーの独立独歩の名盤。彼の特徴である「4度堆積」の力強い和音打鍵が、ピアノという楽器をパーカッションのように響かせます。
【聴きどころ】:1曲目「Passion Dance」。マッコイの左手が刻む重厚なリズムと、右手が描き出す力強い旋律。ジョー・ヘンダーソンのサックスも、マッコイのエネルギーに呼応して凄まじい熱量を発しています。

25. Eric Dolphy / Out to Lunch!

1964年録音。アルトサックス、フルート、バスクラリネットを操る鬼才エリック・ドルフィーの遺作。ブルーノート・レーベルの中でもフリー・ジャズ寄りで前衛的でありながら、不思議なユーモアとリズムの快楽に満ちた一枚です。
【聴きどころ】:ボビー・ハッチャーソンのヴィブラフォンが作り出す、ひんやりとした無機質な空間。そこにドルフィーの、鳥の鳴き声のような跳躍するフレーズが飛び込んできます。

26. Stan Getz / Getz/Gilberto

1963年録音。ジャズとブラジルのボサノヴァが結婚し、世界的な大ヒットとなった歴史的一枚。クール・ジャズの貴公子スタン・ゲッツの甘美なテナーサックスが、アストラッド・ジルベルトの素朴な歌声と溶け合います。
【聴きどころ】:不朽の名曲「イパネマの娘」。ゲッツのサックスは、まるでシルクのように滑らかで、一切の角がありません。ジャズが持つ「寛ぎ」と「洗練」の極致です。

27. Grant Green / Idle Moments

1963年録音。ジャズ・ギタリスト、グラント・グリーンの「静」の側面を捉えた名盤。彼はシングル・ノート(単音)のフレーズを重視し、まるでサックス奏者のようにギターを歌わせます。
【聴きどころ】:15分に及ぶタイトル曲「Idle Moments」。ゆったりとした、しかし確固たるリズムの上で、グリーンが丁寧に音を紡いでいきます。都会の喧騒を離れ、一人の時間に深く潜りたい時にこれほどふさわしい音楽はありません。

28. Charles Mingus / Mingus Ah Um

1959年録音。ベース奏者にして、独裁的なバンドリーダーでもあったチャールズ・ミンガス。彼はジャズの伝統を重んじつつ、それを過激なまでに破壊し、エネルギッシュなサウンドを構築しました。
【聴きどころ】:「Goodbye Pork Pie Hat」。名手レスター・ヤングに捧げられたこの曲は、サックスが咽び泣くような深い哀愁に満ちています。その一方で、他の曲では混沌としたホーンセクションが爆発するダイナミズムを体感できます。

29. Gerry Mulligan / Night Lights

1963年録音。バリトンサックスの巨匠ジェリー・マリガンが、都会の夜の静寂を音にしたような、ウエストコースト・ジャズ屈指の人気盤。
【聴きどころ】:タイトル曲「Night Lights」。ピアノを弾くマリガンの繊細なタッチと、柔らかなサックスの音色。ショパンの「雨だれ」をモチーフにした曲もあり、雨の日の深夜や、静かに読書を楽しみたい時にこれほど寄り添ってくれるアルバムはありません。

30. Phil Woods / Alive And Well In Paris

1968年録音。「チャーリー・パーカーの再来」と呼ばれたフィル・ウッズがパリに渡り、現地の熱いリズム隊と組んで爆発的な快演を見せた一枚。
【聴きどころ】:1曲目の「And When We’re Young」。ウッズのアルトサックスは、驚異的なテクニックを誇りながらも、その音色はどこまでも艶やかで情熱的です。60年代後半の自由な空気感を取り入れつつ、ジャズの本質である「熱いスウィング」を貫いた傑作です。

ピアノトリオの代表的な名盤

日本でも人気の高いピアノ・トリオは、ピアノ・ベース・ドラムの三者が対等に会話することで、ジャズの“繊細さ”と“躍動感”を最も純粋に味わえる編成です。1950〜60年代には、このスタイルを芸術の域にまで高めた名盤が数多く生まれ、ジャズの奥深さを知るうえで欠かせない存在となりました。

31. Bud Powell / The Scene Changes

1958年録音。モダンジャズ・ピアノの父、バド・パウエルが晩年にブルーノートへ残した奇跡的な傑作です。絶頂期の切れ味とは異なる、独特の重みと歌心が宿っています。
【聴きどころ】:あまりに有名な「Cleopatra’s Dream(クレオパトラの夢)」。マイナーメロディが疾走するこの曲は、日本で爆発的な人気を博しました。パウエルの苦悩と天才性が同居した、ピアノ・トリオを語る上で外せない一枚です。

32. Ahmad Jamal / At the Pershing: But Not for Me

1958年のライブ録音。あえて音を「弾かない」ことで空間を生み出し、ピアノ・トリオの概念を覆した歴史的作品です。この独創的なスタイルは帝王マイルス・デイヴィスにも多大な影響を与え、後のモード・ジャズの先駆けとなりました。軽やかな雰囲気の中に緻密な計算が光ります。
【聴きどころ】:「Poinciana」。延々と繰り返されるシンプルなリズムパターンと、そこに置かれるピアノの余白の美しさ。その洗練されたバランス感覚こそがジャマルの真骨頂です。

33. Wynton Kelly / Kelly Blue

1959年録音。マイルス・デイヴィスを支えた名手による、最もブルージーで温かみに溢れた傑作です。ケリーのピアノは、ハッピーな高揚感と黒人音楽特有の深い「タメ」が同居しています。ジャズの「楽しさ」と「包容力」をこれほど見事に体現したアルバムは他にありません。
【聴きどころ】:彼の繰り出すフレーズは、まるで小気味よい会話のようであり、モダンジャズの「楽しい」側面を体感するのにこれ以上の一枚はありません。

34. Duke Jordan / Flight to Denmark

1973年録音。チャーリー・パーカーの傍らで活躍した名ピアニストが、北欧で録音した再起作。70年代特有の洗練された音質が特徴で、海外よりも日本で特に人気が高く、ジャズ・ピアノ名盤として長く愛されています。
【聴きどころ】:「No Problem」。哀愁漂うメロディと、北欧の空気を吸い込んだような透明感のあるピアノの音色。日本人の美意識に深く訴えかけるものがあります。

 

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