レコードの種類はいくつある?

10inch


10inchのサイズや特徴

レコードのサイズの主流は12inchと7inchの2種類ですが、
稀にそのどちらでもない、第3のサイズ=「10inch」に出会うことがあります。

盤の直径は約25cmで、ちょうど12inchと7inchの中間ほどに相当する大きさ。
下の写真のようにジャケットを並べるとわかりやすいですね(左から7inch、10inch、12inchのLPです)。
回転数は33回転のときもあれば45回転のときもあり。
収録時間の最大目安は前者で10分弱、後者で12分強といったところです。

妙に中途半端な大きさなので、7inchのコーナーには大きすぎて入りきらず、
LPコーナーに並べようと思うとLPとLPの間に隠れてしまうので、
什器の前の方に出すか専用の区画を作らないといけないという、
レコード店員にとっては創意工夫のひと手間を要する規格。

なぜこのサイズなのか、という問いについて、ヒントはSP盤にありました。

冒頭で触れたように、SPの基本的なサイズは10インチ(と12インチ)。
このSPの名残もあってか、素材がシェラックからポリ塩化ビニールに切り変わった後も少しの間、
40年代後半から50年代中途までの期間は10inchが製造されてたのです。
それゆえ、古いジャズやクラシック、歌謡曲のジャンルで散見されます。

が、LPや7inchがスタンダードになるにつれ、その姿は徐々にフェードアウト……。
それでも、手のかかる子ほど可愛いではないですが、
このミニアルバム的サイズ感でこそ、という美的感覚は今なお一部の音楽好きには健在のよう。
あえて10inchで再発したり、新譜をリリースするアーティストもいるようです。


10inchの需要

かくしてレコード規格の主流からはじかれ、消え去ってしまった10inch。
それでも今なお、特定のタイトルの10inchに需要の高いものも存在します。

そもそもLPで再発されなかった音源だから、
LPとは別ジャケットでコレクター心をくすぐる価値があるから、
という理由もあるでしょう。

そして、案の定と言いますか、
DGやFLATと同様に初期プレスである証左だから、というのが最大の理由かと思われます。
物体であるレコードには時代の記録が刻印されており、遡るほどに本来意図された音に近づけるので、
オリジナル・プレスを示すだろう記録があるものを多くの人が求めて価値が高くなる。
定石なのですね。

 

12inch

12inchのサイズや特徴

サイズこそLPと同じものの、収録曲数を見ていくと片面に1、2曲程度の12inch
曲数の少ないものを12inchと呼ぶ…と言えそうですが、
正確には盤上の溝を掘る方式がLPと違うのです。

7inchの項でEPについて触れましたが、
あの方式をそのまま12inchサイズの盤に適用したものを指します。
回転数はLP同様に33回転のものが多いですが、45回転のものも存在します。

なお、溝は収録時間が少ないため、盤の外側にのみ掘ることが出来ます(内側はほとんど無音部)。
LPの項目で説明しましたように、レコードというものはその物理的特性から、
外側の方がダイナミクスに秀でて音が良いです。

また、LPだと収録曲数が多い分、掘られる溝は必然的に浅いものとなって出音が小さく劣ってしまいますが、
12inchなら余裕をもって溝の深さを達成可能
加えて、回転速度が速いほど録音時に優位に働くので、45回転の場合はもはや鬼に金棒状態と言えるでしょう。

詰まるところ、12inchとは高音質盤なのです。

 

12inchを購入する層

レコード店でヒップホップやクラブ・ミュージックのコーナーを眺めていると、
LPとは別に12inchと書かれた仕切りを目にします。
そこからも推測できるように、12inchを購入するメイン層はDJです。

一枚の盤に入っている曲数が少ない=プレイする目当ての曲をかけやすいというのもあるでしょうし
(LPだと何曲目か把握して暗いフロアで針を落とすことになります)、
何より潤沢なサウンドシステムを備えたクラブで、低音も大きくしっかり出力してキラーチューンを流せるのは、
フロアを沸かすことに注力すべきDJにとって願ったり叶ったりなのです。