【本日のおすすめ】上田まり / room (1998)

【本日のおすすめ】
上田まり / room (1998)

当時はともかく、今となっては無名のアーティスト。レーベルはAvex、クレジットにはスーパーヴァイザー:ASKA。前もって何の情報も知らなかったら、よくあるJ-POPかなと思ってスルーしていたはず。

“心を癒すメロディーと、日常的でかつ優婉な歌詞で綴られた、6つのラヴ・ストーリー。”

という帯のテキストを目でなぞって、なんとなくソフトでアコースティックな女性SSWものかなあ、ジャケットの素朴さもそんな感じだし、などと想像しつつ再生ボタンを押すと。淡く揺れるギターとキーボード、たっぷりグルーヴを含んだリズム隊。えっ、凄。これはあまりにも……そう、メロウ・フローティン……。

いくつかライトメロウっぽいCDを試し打ちしてきたからこそ理解(わか)る。これは正真正銘の<メロウ>だと。ユーミンと古内東子の中間にあるような歌い方も、柔らかくも物哀しいメロディにフィットしている。

サッドな雰囲気で統一された中、続く2曲目もこれぞAORで外さない。そして3曲目。極めてメロウに、とはこういう曲をこそ、です。90年代シティポップを代表する具島直子『Candy』に匹敵する鉄壁のアレンジに首肯。残る3曲もそういった向きに傾いたMORでいずれも上質。曲によってパーソネルが多少変動しますが、立役者は青木智仁(Ba)、浅野祥之(Gt)、江口信夫(Dr)の3名で間違いないでしょう。

なお、ASKAがどういうアドバイスをしたのかは分からないですが、彼の元に届いたデモテープを聞いてデビューを決めたそう。上田まり自身がシティミュージックの素養をしっかり持ち合わせた稀有なSSWだったわけですね。この後にミニアルバムとフルアルバムを1枚ずつ出していますが、メロウネスの一点で選ぶなら今作のみと断言。情報なしで集めたCDの大半は気付いたら流し終わってたみたいな感じだけど、これはさすがに聴き逃せませんでした。埋もれた90年代シティポップ名作。

(A.K.)