【本日のおすすめ】 Sérgio Mendes & Brasil ’66 / Stillness (1970)

【本日のおすすめ】
Sérgio Mendes & Brasil ’66 / Stillness (1970)

枯葉の落ち始めた秋に合う一枚を。

”ブラジル音楽が好きです”という言葉が発されるとき。それはまずもってMPBやミナスを暗に指している気がします。

かくして往々に零れ落ちてしまう(?)セルジオ・メンデス。ブラジル本土というより国外へのプレゼンター。作曲者というよりアレンジャー。そういった面が大きいのは確かだし、中古でよく見る(しかも安い)から。触れていない人も一定数いるのだと思います。

そんな、セルメンというとマシュ・ケ・ナダで当てた人だよね。という固定観念のあるリスナーに差し出したいのがこちら。

Brasil ’66としての最終作は、それまでのハッピーでサンシャインな色から、寒色系に衣替えしたような異色作なのです。ビター・チョコレートと香るミルクティーを傍らに耳を傾けたくなる……そんな気分。

ミナス的な翳りに覆われる1曲目「Stillness」。

続いてファンキーだが抑制の効いた(サンプリングを誘発する)ドラムブレイク「Riteous Life」。B2も同様にDOPE。クワイエット・グルーヴ。


A4「Cancao Do Nosso」はジェントルな男性ボーカルにうっとりと目を閉じて。

B1「Lost In Paradise」はカエターノの作。丘の上、昼下がり。少し強い風に髪は靡いて、曇り空の海原を眺める……。そんな心象風景も浮かぶオーケストレーションが素敵(その丘がブラジルであることをガットギターが演出する)。

ジルベルト・ジル作の躍動感あふれるA5など、従来のBrasil ’66は引き継がれつつも、70年代のくすみがかってフォーキーな質感を纏っていて(A3はジョニ・ミッチェルですし)。過渡期、クロスオーバー。不安定であることの魔法が宿っている。

個人的な肌感覚から、Flying Lotus「Until the Quiet Comes」や2nd以降のClairoが好きな人も気に入るんじゃないかなと思ったり。

p.s.
最近セルメンが少しまとまって入りました。他の作品も洒脱で洗練されていてグッド。入手はイージーな割に充実の嗜好品。ぜひ試してみてくださいね。

(recommendation & text by A.K.)