【本日のおすすめ】 Norah Jones / Covers (2012)

【本日のおすすめ】
Norah Jones / Covers (2012)

今作はノラ・ジョーンズのカバーアルバム……ではなくって、カバー音源をまとめたコンピレーションです。

ノラの代表作と言えば1st「Come Away With Me」。ジャズなんだけど、どちらかというとSSW的な、あの落ち着いたピアノと声。

オーガニック系の雑貨店やカフェのBGMの定番となって久しいイメージもありますが、実はその方向性は3rdあたりまで。

4thでは少しニューウェーヴに接近したり(2009年だけどその時点でジョン・キャロル・カービーが参加している。あとマーク・リボーも)。5thではデンジャー・マウスを、最新作ではBig Crownレーベルのレオン・マイケルをそれぞれ迎えるなど、それまでの音楽性に甘んじることなく実験と前進を繰り返しているのでした。

そういう変遷を追うのもまた面白いのですが。『やっぱり1stの雰囲気が好きなんだよね。この感じでもう一枚ないかな?』……と調べて落ち着いたのが本コンピ。

ボブ・ディラン、ウィリー・ネルソン、トム・ウェイツ、ジョニー・キャッシュ……とアメリカーナな歌うたい達の楽曲が、ノラのしっとりとした声で綴られていきます。リトル・ウィリーズでの活動からも窺えるように、彼女はカントリーが大好き。ラインナップにも納得がいきますね。

アレンジは1stや2ndの延長の感じで、というのもここに集められた音源の録音は2001~2004年のものが多くって。まさに自分の聴きたかった初期の空気がパッケージされていて痒い所に手が届くというか。助かります。

中でもグラム・パーソンズの「SHE」とウィルコの「Jesus, Etc」が一際良かった。後者に関してはあの「Yankee Hotel Foxtrot」-9.11.と重ねられる名盤-収録の大名曲。このカバーは2009年ライブの録音なのですが、シンプルなエレキギターの弾き語り、ジャキッとした残響、オリジナルとは別の向きに憂いを帯びていて。”Strung down your cheeks~”……思わず口ずさみたくなるアレンジ。すごく良いです。

p.s.
「Come Away With Me」の発売は2002年。やはり9.11.の翌年で、あの事件で暗くふさぎ込んだ世界に、静かな癒しとして受け入れられたと語られます。そのノラが「Yankee Hotel Foxtrot」の曲を歌ったことで、ミッシングリンクというのか分かりませんが、何かが埋まったようにも思えて。ちなみにウィルコのジェフ・トゥウィーディーとは後に友好関係を築くことになるのでした。

(recommendation & text by A.K.)