【本日のおすすめ】 浜田理恵 / 無造作に愛しなさい。 (1989)

【本日のおすすめ】
浜田理恵 / 無造作に愛しなさい。 (1989)

今日のおすすめは浜田理恵ね……って誰だろう?
となる人がほとんどではないでしょうか。いや実際、相当にマニアックなSSWです。
でも、もし貴方が平成生まれならこのフレーズ、耳馴染みありませんか。

”なにがみえたの? 
どんなふうなの?
ねえ おしえて”

……そう、NHK「いないいないばあっ!」のOPです!
あのOPの作曲と歌がこの人だったんですね。

改めて聴くとこのコード進行はいったい……と笑っちゃうくらい摩訶不思議。
そんな一筋縄ではいかない彼女の、独特で濃密な世界にじっくり迷い込めるのがこの1st。

デッドで閉塞感のある音空間なのに、ファンタジックなしなやかさで舞ってみせる。
間違いなくテクノポップの延長にある音楽性ですが、そこから一歩進んで(プログレス)いて、そんな言葉はありませんが、ポスト・テクノポップと試しに言ってみたくなります。

トリッキーで、コケティッシュで、時にオリエンタルかつ呪術的。コード進行の妙技はある種ソフィスティポップのそれ。
ポップセンスと高度なコンポージングがクロスする綱渡りにも似た加減で。眩暈を覚える彼女のアクロバティシズムは、矢野顕子や小川美潮にも比肩するほど冴えている。

なお、リリース元はMETROTRON RECORDS。ムーンライダース鈴木博文が主催のインディーレーベルです。
鈴木慶一はアンディ・パートリッジとも交流がありますし、実際この迷宮的マジカル・ポップは「Nonesuch」や「Apple Venus」といった後期XTCに近いかも(驚くべくはそれらに先んじているということ)。
語られることの少ないCDオンリーの秘宝。

(recommendation & text by A.K.)