【本日のおすすめ】 バベットの晩餐会 (1987) 監督:ガブリエル・アクセル
【本日のおすすめ】
バベットの晩餐会 (1987)
監督:ガブリエル・アクセル
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こんな映画もあるんだ。
娯楽大作や話題作しか知らなかった自分にとって、さざ波のような衝撃だったのだと思います。
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近年に入って続々と閉店しているTSUTAYA。とても寂しいし、文化の拠点が消えていくことに諦念を覚えてしまう……。
そんなTSUTAYAはかつて「発掘良品」というブランドを掲げて過去の名画をレンタル展開していました。『バベットの晩餐会』はそれで知った一本で、自分が初めて触れたミニシアター系映画なのです。思い入れのある作品なのでご紹介しますね。
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お腹をすかせた寒い日にすする一杯のスープのように。画面は厳かで、物語や演出もごく慎ましい。だからこそ心の中に温かみがしっかり浸透していく。珠玉のデンマーク映画です。
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舞台は北欧の片田舎、ユトランド半島のひっそりとした村。ゆったりという表現も憚られる自然の厳しさをひしと感じる辺境の地で暮らす姉妹。牧師の父が亡くなったことで信仰心薄らぎ、不和も漂う村人たちを繋ぎとめるべく、彼らを一夜の晩餐会へ招くことに……というあらすじ。
シェフとして振る舞うのは、姉妹のもとで家政婦として仕えるバベット。フランスから渡ってきた彼女が、腕によりをかけたフランス料理を振る舞います。
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粛々と進行する調理シーン、そして見慣れぬフランス料理をおずおずと口に運ぶ村人たちの、驚きや喜びの綯交ぜになった卓上のやり取り……。
ユーモアも交えつつ、こわばった会場の雰囲気が和らいで満ちたりていく様が何とも言えず叙情的で。鑑賞したのはもう10年以上も前だけど、あのシーンは確かに心に残っています。
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滋味深い一本。願わくば、昔の自分と同じに本作を観てさざ波のような衝撃が広がる人がいたら嬉しいな。
(recommendation & text by A.K.)