【本日のおすすめ】 Kenny Drew Trio / By Request (1985)
【本日のおすすめ】
Kenny Drew Trio / By Request (1985)
”音楽初心者なんですが、おすすめのレコードってありますか?”
実際にレコードショップで働いてみて、この王道の質問に答えるのは思っていたより難しいな~と感じます。
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質問をされるお客様の多くは10代か20代かな?
話してみると、プレーヤーを買ったけど音楽に詳しくはなくって(多分昔の音楽を指しているのでしょう)・・・とのこと。
このやり取り、巷のお店で流れているような聴きやすいジャズを希望されるのが定石。
やっぱり外さないビル・エヴァンスかな?ボサノヴァが若い世代にも受け入れられているみたいだし、ゲッツ/ジルベルトかな~~でも今在庫ないし・・・。
と考えを巡らしながら数枚を提案。でも、試聴していただくと、どうやらイメージしていたサウンドとは違ったみたい・・・(不甲斐ないです)。
”自分でも探してみていいですか?”
そういって彼/彼女はジャズピアノのコーナーへと向かい、大抵この一枚を見つけてくるのでした。
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ケニー・ドリューの「バイ・リクエスト」。デンマークで録音されたピアノトリオもので、同国のレーベルSteeple Chaseの作品も彷彿とさせる、端正なアルバム。
曲目は「Misty」「Smoke Gets in Your Eyes」「Fly Me To The Moon」などスタンダード中のスタンダードばかり。
というのも、日本のスイングジャーナル誌が”ドリューに弾いてもらいたい曲は?”という読者アンケートをとって制作した企画盤なのです。なるほど、それで。
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ドリューと気心の知れたニールス=ヘニング・エルステッド・ペデルセンの、手堅く闊達なベース。エド・シグペンのさりげないドラム。ドリューのピアノは熱く激しかったの頃のそれではなく、ヨーロピアンの流麗さを纏ったもの。
自分も最近初めて聴いたのですが、無理なく流せるものの想像していたよりはイージー過ぎない塩梅で。
おすすめを尋ねたお客様は自分自身で選び、試聴して、購入されていくわけであり。そうか、彼/彼女のイメージする<入り口の音楽>ってこれだったんだ・・・と学びを得たレコ屋店員なのでした。
こんな経緯もまた”バイ・リクエスト”な一枚(説得力がありますよね)。レコード~ジャズ入門にいかがでしょうか。
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p.s.
ヘッドフォンをかけて机に向かう水彩画のアートワーク。イラストレーターの川村みづえ(小林亜星の妹)が描いたそれは、10年代後半に隆盛したローファイヒップホップのStudy Girlも連想させるようで。
ヴィジュアルと音楽性。80年代と現在がなんだか思わぬ形で繋がっているようで興味深く思います。
(recommendation & text by A.K.)