【本日のオススメ】 Steve Kipner / Knock The Walls Down (1979)


 

 残念ながら亡くなってしまいましたが、オリヴィア・ニュートンジョンの”フィジカル”は名曲として有名ですよね。
彼女の最大のヒット曲を生み出したのが、今回御紹介の名メロディメイカーとして知られるステーヴ・キプナーです。

 アメリカ生まれですが、若いころにオーストラリアに移住し業界入り。その後渡英すると以前ご紹介したバンド、プレイヤーのリードボーカリスト、ピーター・ベケットと出会い、スカイバンドなるバンドを結成。後にキブナーとベケットは80年代に2-Man-Unit、シング・アウト・ラウドでもコンビを組みます。
ちなみにオリヴィア・ニュートンジョンのもう1つのヒット曲”トゥイスト・オブ・フェイト”を書いたのはピーター・ベケットという因縁浅からぬ2人です。

 今回のキブナーの唯一のソロアルバム、ノック・ザ・ウォールズ・ダウンは、そのピーター・ベケットやToto勢、ビル・チャンプリン、デヴィッド・フォスターなど豪華なメンツが参加の名アルバムです。
 ラリー・カールトンのアコギストロークで始まり、盟友ベケットも参加したシティ・ソウル②、R&B色が濃厚な味付けで、エンドではビートルズチックなコーラスが印象的な④。
アカペラのコーラスのイントロからサビまで一気に盛り上がっていくドラマティックな⑦など粒揃いですが、やはりプロデュースも担当したジェイ・クレイドンの超絶的なギターソロが2分近く続く⑩がインパクト大!
 いきなりチョーキング+ライトハンドタッピングのトリッキーなフレーズで始まり、ねちっこく、時に爽快にリスナーの心を掴みつつよどみなく続いていく様は、まさに湧き出る泉。後半には8連府メインの怒涛の速弾きに雪崩れ込む。さほど音数は多くないのに、この構成力とフレージングの組み立てに口あんぐりで声も出ません。
 さらに感動的なのは、このソロのバックに流れるシャワーのような”アー”というコーラス。当時はサンプリング技術もないためジェイがオーバーダビングを重ねに重ね、3日間程かけて完成させたそう。

 このアルバムに出会わなければAORにのめり込むことも、そしてギターを弾き始めることのなかった、私にとっては唯一無二の1枚です。(山口)