【my bloody valentine】ライブレポ~2026年来日公演で見えた「マイブラの虚構と実在」~

虚構が実在に変わった夜:
マイブラ来日公演レポとグッズから考察するAI時代の虚構論

my bloody valentine (マイブラ) 2026年来日公演ポスター

2026年2月4~5日、伝説的なシューゲイザーバンドで今もなお新規ファンを獲得し、巨大な影響を与え続けているマイ・ブラッディ・ヴァレンタイン(マイブラ)の約8年振りの来日公演が大阪で行われた。
チケット代20,000円、ライブの悪評もよく聞くし…さてどうするか。
運を天に任せ「先行抽選でハズれたらやめとこう」と申し込むと…なんと当選!

当選したからには覚悟を決めて行くしかない!
ということで、2026年2月大阪公演の感想・セットリストの雰囲気などをレビューします。

結論を先にお伝えすると、
ライブは本当に最高だったんですが、心の引っかかりがあったのも事実。

それらを全てひっくるめ書き残しますが、あくまで私個人が感じたことなのでご了承ください。
マイブラとの出会いからライブレポ、最後は「グッズから考察するAI時代のマイブラ虚構論」まで!

私にとってのマイブラとは

lovelessざんまい

学生時代、友人の勧めでシューゲイザーの金字塔「loveless」を聴きました。
人生でそう多くは訪れない「今まで聴いたことのない音を聴く」体験を、僕はこのlovelessで体感し、1曲目の「Only Shallow」からラストの「Soon」までぶっ通しで聴き虜になってしまいました。その後、1stアルバムの「Isn’t anything」を聴きましたが、当時はあまり良さに気が付けずlovelessばかり聴いていました。

知ったころには完全に活動休止中でしたが、
突如リアルタイムで訪れた2013年マイブラ復活、最新作「mbv」の発売

確かに良いアルバムだが、結局私にとってマイブラはlovelessでしかありませんでした。
(我ながらなんと愚かな!)

私の”マイブラ感”を変えた編集盤「EP’s 1988-1991」

マイブラに対し、私は非現実的な、まるで虚構のバンドのように接していました。
ギターが轟音で鳴ってると言われても、ピッキング感が感じられずギターを弾いている姿が想像できない。
あんな轟音の中、ささやくように歌っているのになぜか私の耳までハッキリ届く声。
メンバーの写真を見ても、どこか実在感がないままとにかくlovelessを聴き続けていました。

そんな、私とマイブラの関係を変えたのは、復活劇の最中に発売された「EP’s 1988-1991」。
これまでのEP+未発表曲が収められた編集盤。
ここに収録されている曲のサウンドが「生々しくバンド」であり、虚構だと思っていたマイブラを実在するバンドだと思わせてくれました。

このEP’sの中で私が好きな曲を2曲だけ紹介させてください!

Slow

lovelessっぽい音が後ろの方で聴こえてくる。
そしてケヴィン・シールズが歌うメロディーがしっかりと主役になっており、そこにIsn’t anything期のようなパキっとしたダウンテンポなビートに身体が揺さぶられる!

lovelessはあそこまで振り切ったからこそ大名盤になったと思いますが、全ての要素が絶妙にミックスされている「Slow」、本当に名曲です!

Thorn

初めて聴いたとき、マイブラとは思えないポップさに驚きました。サウンドは確かにマイブラなんだが、それを超えてくるポップネス。

その後、当時は知らなかったマイブラの初期音源「Ecstasy And Wine」を聴いて納得。
今のマイブラとはかけ離れた完全なネオアコバンド。
マイブラにもネオアコ期があったなんて。

(Ecstasy And WineのLPは見つけたら絶対買いたいと思っていますが、お高いので怯えています。)

“サウンド探求の旅”を追体験できるバンド

このEP’sを聴くことで、ケヴィン・シールズの「サウンドへの探求心」を存分に感じることができました。
探求の旅の途中でアウトプットされる作品は、mbvに至るまでどれもとっても重要なものだったとようやく気が付くことができ、どれも大好きな作品になりました。
深層までたどり着こうとする探求の旅を想像しながらリリース順に聴くと、その旅路を追体験しているようでとっても楽しいし、めちゃくちゃかっこいい。

こんなにも執拗に「自分だけのサウンド」を追い求めるバンド、なかなか見ることはできません。
そして、この探求心が原因でレコーディング費用が膨大に膨れ上がったり、メンバーが離れていったりと、lovelessリリース後、バンドは休止状態に入ります。

こうして追っていくと、マイブラが今活動しているのはものすごい奇跡だと思ってしまいます。

悪評が目立つライブ

前述したように、虚構としてマイブラを楽しんでいた期間が長かったため、ライブを見たいとはあまり思ったことが無かったんですが、今回8年振りの来日がアナウンスされ、何故だかとっても見たくなりました。
ようやく実在するバンドだと認識した私ですが、まだ信じられない。
この耳で直接聴いて確かめたい

そして、マイブラのライブについて調べてみると、

  • 演奏を途中でやめ、何回もやり直す
  • 数十分に及ぶノイズで会場を出る人が続出
  • 音のバランスが最悪、声が全く聞こえない
  • lovelessの再現なんか無理

などの評判が。

でも、分かる気がする。
ケヴィン・シールズのサウンド探求ヲタクっぷりを体現したようなエピソードだ。

このまま見ない方が幸せかもしれない…
だが、当選してしまったものはしょうがない。この20,000円、マジで無駄にしたくない。
ケヴィン様、お願いします!と祈りながらバスに乗り名古屋から大阪へ向かいました。

いざ本番!果たして結果は…?!

マイブラ2026年来日公演、ケヴィン・シールズのアンプの壁
開演前、ケヴィンのアンプの山

遂に始まったマイブラのライブ。
1曲めはlovelessから「I Only Said」。
前評判からかなりビビり倒しており、配られる耳栓を保管しておくために持参した”My耳栓”を30分前から装着していましたが、思ったより大きくないかも!と思いすぐに耳栓を外すと、最高に気持ち良いサウンドがそこに立ち現れました!

ケヴィン・シールズとビリンダ・ブッチャー

ケヴィン・シールズのギターサウンドは、確かにlovelessを100%再現するものではありませんでしたが、lovelessをこの場所に実在させたようなサウンドでした。
何というか、ケヴィンがギターの弦をピッキングして、アンプから音が出てますやん!っていう実感。
この生の感触を肌で感じたとき、ようやくマイブラのしっぽを掴んだ気がしました。

それに対しビリンダ・ブッチャーの歌声は、あまりに音源通りだった。
轟音の中でも聞こえるささやき声が完全に再現されていた。
これはバンドだけじゃなく、PA含めたチーム全体でなせる業です。天晴れ!

そして、彼女は終始笑顔で観客の声援に応えたりと、とても人間らしい姿が見られました。
バンドと観客の間にいたのは間違いなくビリンダでした。

リズム隊のデビー・グッギとコルム・オキーソーグ

最大のリスペクトを払いたいのが、ベースのデビー・グッギとドラムのコルム・オキーソーグ。
この二人のエネルギーがマイブラをバンドたらしめていました

今回のライブで披露されたlovelessの数々の名曲たちが、この二人のアグレッシブかつ繊細な演奏によってキレイに輪郭を与えられ、体全体で感じるド迫力な曲に生まれ変わっていました。
ライブ中盤で披露された「Come in Alone」は、このライブの一つの到達点のような、完璧なアンサンブルだったと思います。
続いて演奏された「Only Shallow」はデビーがベースでグイっと引っ張り、そこにギリギリでテンポ・キープするコルムのドラムが、非常ーーーーにヒリヒリして、それってマジでバンドやん!

こんな生々しいマイブラが見れるなんて、思ってもみませんでした!

ブーストされるIsn’t anythingとmbvとEP’s

このリズム隊が生で演奏するIsn’t anythingとmbvとEP’sの曲が本当にかっこよかった。
lovelessの曲はマジックがかかったようでしたが、Isn’t anything、mbv、EP’sの曲は、その曲の良さが最大限にブーストされたようでした。

僕が大好きな「Slow」も最高だったし、「Nothing Much to Lose」の迫力たるや。
とにかく圧巻でした。

セットリスト

1. I Only Said(loveless)
2 When You Sleep(loveless)
3 new you(mbv)
4 You Never Should(Isn’t anything)
5 Honey Power(EP’s 1988-1991)
6 Cigarette In Your Bed(EP’s 1988-1991)
7 only tomorrow(mbv)
8 Come In Alone(loveless)
9 Only Shallow(loveless)
10 Off Your Face(EP’s 1988-1991)
11 Thorn(EP’s 1988-1991)
12 Nothing Much To Lose(Isn’t anything)
13 To Here Knows When(loveless)
14 Slow(EP’s 1988-1991)
15 Soon(loveless)
16 wonder 2(mbv)
17 Feed Me With Your Kiss(Isn’t anything)
18 You Made Me Realise(EP’s 1988-1991)

大満足のセットリスト。
噂に聞いていた「You Made Me Realise」のノイズも、それはもうすごかった。
だが、気分が悪くなる感じではなかった。確かにすごい音量で耳栓必須ではありましたが。
この日はサウンド・メイクが本当にハマっていたんだと思います。

マイブラを信頼していいのか問題

今回の大阪のライブを二日間とも見て、過去にも2回見たことがあるというマイブラ・ヘッズの友人に話を聞いたところ、僕が見た大阪2日目のライブがこれまでで一番良かったそう。
1日目は、悪評通り演奏のやり直しもたくさんあったようです。
SNSでは「公開リハを見せられてる」といった感想もありました。

高いチケット代を払って、交通費を削るためにバスにのって、仕事の休みをずらしてもらってようやくたどり着いた先がこれだったらどうだろう…

いくら大好きなバンドでも、いくらケヴィンの探求心を理解していたとしても、さすがについていけないかも、と思っちゃいました。

そういった意味で、以前こちらのコラムでも書いたFlaming Lipsはマジで最高のバンドだと改めて思いました。
僕らを楽しませることに全力だった。

グッズから考察するAI時代のマイブラ虚構論

なぜ「ジャケット」や「作品名」のグッズばかりなのか

せっかくライブに行くんだから、やっぱグッズは欲しいよね、とラインナップを見る。
lovelessをはじめ、ジャケットや曲名、作品タイトルがプリントされたグッズがずらり。
そういえば、アパレルブランドとコラボしたアイテムも同じような内容だった。
ジャケットデザインはまだ分かるとしても、作品名や曲名がそのままグッズになることって珍しい気がする。
そして、それらはこぞって人気アイテムだ。
ここに、マイブラは虚構であるという世の認識が現れているのではないか。

実在するバンドとは信じがたい。ただ、作品は確かに在る。

実在しないことへの免疫がついてきたこのAI時代、マイブラの虚構化はさらに加速しているように感じます。
そんな時代の中、彼らがライブ活動をしていて、体験を伴った感動を与えていることは非常に重要なことだ

これからも是非、“出来の良いライブ”をしていただきたいと切に願っている。


おわりに

入場時間前、長蛇のグッズ先行販売列に並びながら、私は「今日、絶対にマイブラの実在を確認する」と意気込んでいた。

lovelessTシャツが真っ先に売り切れとアナウンスされる中、今回のグッズの中で唯一メンバーの写真が使われ、「my bloody valentine」とプリントされたTシャツを祈るように購入した

私の願いは無事届いた。マイブラは確かにそこにいた!

(ノザキ)

my bloody valentine (マイブラ) Tシャツ