再熱する8cm CD(短冊CD)の世界 プレミア盤の傾向と実例を一覧でご紹介
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プレミア短冊CD 高額になる作品の傾向②特別枠
ここまではジャンルやアーティストといった、内容の音楽そのものに関してのプレミア傾向をご紹介しました。
本章ではそれらに当てはまらない、いわゆるアイテムとしての側面で価値が付く例について触れたいと思います。
未開封品
中古の音楽ソフトの価格はコンディションによっても左右されます。
盤やジャケットに傷が多ければ物として価値は下がりますし、良好であれば適切な市場相場に合わせて決まるでしょう。
そして未開封品は最高のコンディションという以上に、開封されていないこと、それ自体に意味を持ちます。
通常であれば多くの中古店の110円コーナーで複数枚ストックされている有名作品でも、未開封であれば数千円以上でも買い手が付くことは少なくありません。
例:ZARD / 運命のルーレット廻して (1998)

TVアニメ「名探偵コナン」のOPとして起用された『運命のルーレット廻して』。
余りにも多いコナンの主題歌の中でもファンからの支持の厚い、平成の代表的なヒットソングの一つです。
開封済みでタイアップ・シール(次の項目で説明します)が残っていなければごく安価で見つけられるものですが、未開封であれば数千円で売買されることも珍しくありません。
なお、このタイトルに限らずZARDの短冊CDは未開封であれば同様の相場で取引されやすい模様。
翻っては、今なお熱心なコレクターがいる、新規参入のファンが現れていることが伺えます。
タイアップ・シール
レコードの世界では国内盤の多くに帯が付属して販売されていました。
帯は紙製の繊細なものなので簡単に破れてしまったり、あるいは廃棄されて残っていない場合もしばしばなのですが、世界中で国境を越えて中古盤が往来するようになった現在、この帯付きが欲しいという人々が増加。
帯付きであれば帯なしよりも高額であることが通常ではあるものの、タイトルやジャンルによっては(例えばメタルのような)帯そのものに千円単位の価格が事実上付くケースもあるのです。
8cmCDに話は戻りますが、短冊CDの世界でもレコードの帯に相当するものがあります。
それがタイアップ・シールと呼ばれる、ビニールの外袋に貼られたステッカーです。
8cmCDは基本的にはシングルなので、ドラマ主題歌やアニメ主題歌、あるいはCMソングといったTVとのタイアップとして発表された楽曲が多いもの。
この曲は何で流れていたものなのか、明示するのがこのステッカーなのです。
例:ZARD / 眠れない夜を抱いて (1992)

やはりこちらもZARDで例を挙げます。1992年のシングルはテレビ朝日放送のワイドショー「トゥナイト」のオープニング・テーマとして起用されていました。
CD全盛期かつビーイング全盛期の90年代前半なので、このCD自体は非常に多く出回っている(ゆえに安価で入手できる)のですが、橙色の丸いタイアップ・ステッカーが保存されている状態だと数千円以上で取引されることもあるようです。
未開封はもちろん、開封済みでタイアップ・ステッカーが残っている場合でも、です。
購入特典
最後に特殊なケースを2種類ご紹介します。ここで扱うのは8cmCDではあるけれど、短冊状のパッケージでないことも往々にしてあるものです。
まずは購入特典について。
通常のアルバムCDを決まった店舗で購入すると限定特典が付いてくる、ということは多々あります。
ステッカーやポスター、時にはカセットであることも。
その小さいサイズから8cmCDが配布されたケースもありました。
例:Cornelius / nova musicha シリーズ

CorneliusのアルバムCDをタワーレコードで購入した際に入手できた8cmCDで、シリーズものになっています。
新譜が出るごとにナンバリングも更新され、少なくとも2001~2006年の期間にno.11まで出ています。
ジャケットとタイトルは現代音楽の有名レーベル「Cramps」の名シリーズ「Nova Musicha」のパロディで、8cmCD本体に記録された内容はアルバムのユーモラスなサンプラー(全曲を一斉に再生する、各曲を数秒ずつに切り分けて連続再生する、etc)といったもの。
大きくプレミアが付いているわけではありませんが、一枚単位でも数百円ほど、シリーズでまとまっての取引ならそれ以上の価格で売買されることもあるようで、コレクターズアイテムとしての側面が強いです。
特別再発企画
特殊なケースその2は、レーベル主体による通常の再発とは異なり、企業などが特別企画として立ち上げたもの。
小さいサイズを活かして、元々はレコードだったものをミニチュア化するという、やはりアイテムであることを前面に出し、魅力として訴える部分が強いです。
レコードのジャケットをミニサイズで再現するので、パッケージも短冊でなく正方形状になっています。
例:タイムスリップグリコ 青春のメロディーチョコレート

キャラメルを筆頭にいわゆる食玩をリードしてきた会社、江崎グリコが2001年から始めたシリーズ「タイムスリップグリコ」。なつかしの20世紀をキーワードに、昭和の(サブ)カルチャーへスポットライトを当てたもので、当時の特撮やアニメキャラクター、身の回りにあったもののフィギュアや、雑誌を再現したミニチュアなどを送り出していました。
レトロな魅力を強調する本シリーズの一環で2003年夏に発表されたのが「青春のメロディーチョコレート」という企画です。
内容はアーモンドチョコ2粒+8cmCD1枚といったもので、食玩であるものの明らかにチョコの方がおまけ。
シングルレコードをそのまま小さく、というコンセプトのようなのですが、ジャケットやレコードを模したラベル面に留まらず、紙のスリーブも再現する徹底ぶり(ただし収録曲はA面の1曲のみ)で大人気を博し、ワタナベエンターテインメントからCDのみで再発もされたほど。
第2弾まで発売され、キャンディーズ「ハートのエースが出てこない」や子門まさと
「およげ!たいやきくん」など、全部で46タイトルが出ていたようです。
非常にプレミア化している訳ではありませんが、今も蒐集している人はいるようで、オークションサイトやフリマサイトなどで単品の未開封品やまとめ売りといった形で、ある程度の価格で売買がなされています。
最後に
8cmCDという再生メディア/アイテムについてのエトセトラをここまでご紹介してきました。
私自身、今までぼんやりと8cmCDの波が来ているかなというレベルの認識だったのですが、今回コラムを書くにあたってリサーチを進めてみて、様々な種類の機運やホットスポットがあるのだと気付いた次第です。
着目すべき/したい点が多かったゆえ、当初の想定以上に紙面の幅が拡がりました…ここまでお目通しいただきありがとうございます。
”持っている短冊CDにこんな需要があるとは”、”今度から短冊CDコーナーも掘ってみようかしら”と再考する一助になりましたら幸いです。
(執筆:A.K.)